

一般社団法人日本葡萄酒革進協会
ワインは、フランスのボルドー、ブルゴーニュ、ロワール、
またアメリカのナパ、ソノマ、あるいは、イタリアの
ピエモンテ、トスカーナのように、地域の産物として
語られることが多い飲み物です。
その理由は、夫々の地域の、気候や土壌に加えて、地域
としてのワイン生産への取組が、夫々の地域の食習慣とも
相まって、地域の文化および産業として育ってきたから
ではないかと考えられます。今や日本でも山梨、長野といった
従来の産地だけでなく、北海道から九州まで様々な地域でワイン生産が行われるようになってきました。今後、日本においても、地域の風土を反映した品質の高いワインが各地で生産されれば、「私はブルゴーニュのワインが好きだ」と言う人がいるように、国内だけでなく、海外からも「日本の○○地域のワインは美味しい、好きだ」と評価されるようになるのではないでしょうか?


ワインは、嗜好性の高い農産物です。品質とその評価により、1本百円くらいから、百万円を超えるようなワインがあります。そして世界中あらゆる国で飲まれており、市場も極めて大きいと言えます。そして、ワインは基本的に葡萄のみから造られ、何も足さず何も引かずにできあがる飲み物です品質の高いワインは、品質の高い醸造用葡萄から…気候や地質だけではなく、何より造り手の情熱と努力によって品質の高いワインが出来上がると私たちは考えています。
日本においても、地域の風土に裏打ちされた品質の高いワインが数多く出てくれば、成長性の高い新たな農業となる可能性もあるでしょう。
JWISでは、このような基本的な考え方をもとに、もともと桃やリンゴをはじめとした果樹生産は盛んながら、これまであまり醸造用の葡萄の栽培に取り組んでいなかった「福島県」、特に地震・津波と原子力発電所の事故により被災状況が厳しい「浜通り」地域に着目し、地域とともに、品質の高い醸造用の葡萄づくりに挑戦するとともに、それを支える人材育成の仕組みを構築することで、「フクシマ」が近い将来に新興のワイン産地として語られる日が来ることを目標に活動を開始しました。
JWISは、私たちの理念に賛同する福島県内の地域の方々とともに、2016年より醸造用葡萄の試験栽培を開始し、2017年には作付面積を増やし、オリンピックイヤーの2020年には、福島復興のシンボルの一つとしてワインの出荷を目指したいと考えています。
福島県浜通りは東北地方の中では、比較的温暖な気候を有し、太平洋側の海岸地域から阿武隈の山々に向かって、ゆるやかな東向き、南向きの斜面が数多く見られる地域です。また、阿武隈山系は水はけのよい花崗岩主体の地質を有した地域でもあります。
このような気候や土壌のポテンシャル、そして原子力発電所の事故により環境に放出された放射性セシウムの土壌から葡萄果実への移行がしにくいという科学的知見にも着目し、新たな持続可能な農業のひとつとして挑戦できないかと考えています。

国内のワインの消費量は、1998年頃のポリフェノール
による赤ワインブームを超え、2008年以降急激に増加
傾向にあります。ところが、このうち約7割は輸入ワイン
であり、国産ワインは約3割に過ぎません。更に日本で
生産されたブドウのみを使用している日本産ワインの量は
国産ワインの中の10~15%しかないのが実情です。
すなわち、日本産ワインは、国内のワイン消費量のわずか
3~5%にすぎません。
さらに、国内で生産されている醸造用ブドウの収穫量の
上位は、甲州、マスカットベーリーA、ナイアガラ等
であり、世界のワイン市場で優勢を占めている、シャルドネ、
メルロー、カルベネソーヴィニオンは、まだまだ生産量は少ない状況です。JWISでは、シャルドネ、メルロー、カルベネソーヴィニオン等、海外でも高い評価を受けている品種を中心に苗木を植え付けすることを考えています。

ワインは、原則ブドウ果実だけで作られます。JWISは、品質が高く市場で評価されるワインを生産するためには、まず質の高い醸造用ブドウを栽培することが大切であるとの考えから、一貫して品質の高いワインづくりを目指し 海外でも高く評価されている山梨県の中央葡萄酒株式会社に協力を求め、醸造用ブドウ栽培の現場技術を福島県浜通りを中心とした地域に伝えていきたいと考えています。
一方、国内のワイン関係の識者からは、欧米のワイン産出国に比べて、日本では醸造用ブドウ栽培およびワイン醸造の現場作業に携わる専門人材育成の場が不足しているとの声も聴かれます。そこで、JWISでは、福島県内での醸造用ブドウの植え付けと並行して、醸造用ブドウ栽培およびワイン醸造の現場作業に携わる専門人材育成の機関の創設の検討も進めています。この取り組みは、ワインに係わる日本の技術水準の底上げに寄与するものと考えています。